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薬師寺 (1)お寺で写経 「般若心経」

20091102_doujouときどき、家で般若心経を写経をするようになった。とは言っても、30分位で4行ほどしか書けない初心者だ。般若心経も半分くらいしか覚えていない。

それでも一度、お寺で写経したいなと思い、いつでも写経ができるという薬師寺(奈良・地図)を訪れた。左の写真は薬師寺の写経道場。

◆薬師寺での写経について
場所:薬師寺「写経道場」にて
時間:午前9時~午後5時(随時)
納経料(各一巻):般若心経2000円(白鳳伽藍、玄奘三蔵院伽藍の共通券付)、薬師経4000円、唯識三十頌5000円
特徴:宗派は問わない・いつでも納経できる・毛筆のほか鉛筆でもできる・一度に全部を書きあげなくてもいい・家族で書写できる・お手本に写経用紙を重ねて書ける・納めた写経は永代にわたり供養してもらえる・正座で書くほか椅子に座っても書ける・納経三巻で納経朱印帳が贈呈される・納経108巻で輪袈裟が贈呈される
写経会と法話の日:(奈良)毎月5日・8日・第3日曜日、(東京)毎月12日・土曜日

◆薬師寺での写経の流れ
薬師寺「写経道場」の受付で申し込む
輪袈裟(ブログ)をつけ丁子(ブログ)を口に含み体内を清める
象の香炉をまたぎ、身体を清める
墨を磨り、写経作法を読んでから写経する
書きあがったら、正面の仏さまの前に写経を供える
輪袈裟を返し、丁子入れに丁子を捨てる
お庭を拝見したり、お茶をいただいたりして、お疲れさま~

20091102_shitunai_2◆薬師寺で写経したよ
9時すぎに薬師寺に到着した。受付で申込用紙に記入し、輪袈裟と写経用紙を受け取る。奥へ案内してもらい、お坊さんに作法を教えてもらった。まず、輪袈裟をつけ、丁子(ちょうじ)を口に含む。丁子は体内を清めるためと、精神統一のためだという。噛むと苦いので、舌の上に乗せるといいらしい。口に含んだまま写経をし、写経を納めたら部屋から出て丁子入れに丁子を捨てる。

部屋に入り、象の香炉(香象:下の写真)をまたぐ。え?またぐの?と思ったけれど清める作法なのでまたいだ。どこに座ってもいいけれど、正座をするときっと痺れるだろうと思ったので、椅子に座った。

20091102_kouzou_3 お坊さんが硯に水を入れてくださった。ということは、ちゃんと墨を磨るってことだ・・。学生時代以来初めてだ。めちゃくちゃ懐かしい作業。時間がかかるかな?と思ったけれど、水は少しだし、字もたくさん書くわけじゃないので、すぐに磨れそうな気がした。「写経作法」を読んでから写経してくださいと言われる。そして、願い事を書く「為書」のところは、「大願成就」とか「家内安全」のような四文字熟語とかでなく、文章で具体的に書いてくださいと言われた。例えば、「○○大学に合格しますように」とか「家族が健康で穏やかに過ごせますように」と書くのがいいようだ。

20091102_yakushigarasuよし、頑張ろう!・・・でも、その前に写真を撮っておこうとカメラを取り出す私。すると、お坊さんが、今は誰もいないので、前に行って仏像などいろいろ見たらいいし、写真も撮っておくといい、と勧めてくださった。写真を撮ることを不快に思う人もいるからね、と言われた。このときは、他に誰もいなくて貸切状態だったので、これ幸いと前に進むと、お坊さんが、この薬師如来はガラスで作られていると教えてくださった。

そして、隣の部屋に案内してくださり、2500年前の檜(ひのき)を見せてもらった(下の写真)。「台湾檜(樹齢二千五百年)金堂用材調達の記念として劉圳松氏より贈らる」と書いてあった。これは薬師寺の柱などに使われたものの一部だという。2500年前!紀元前! 今ではこんなに大きな木はもう採れないのだそう。輸出が禁止されてるんだって。この板の年輪を数えだす人もいるらしいが、気が遠くなりそうな作業だ。この木は2500年前に日本に来て、ずっと薬師寺にいるんだなぁ。ここで、たくさんの人たちや時代を見てきたんだなぁって、そう思ったらなんだか木の中に年表がつまっている気がした。そして、今も生きているように思えてならないのだった。

20091102_hinoki_2そんなふうに、いろいろお話してくださり、道場に戻った。もう一度、象の香炉をまたぎ席に着くと、お坊さんは伽羅(きゃら:ブログ)という香でもう一度身体を清めましょうと、伽羅を手に乗せてくださった。粉状の伽羅を手のひらで擦り合わせ、手の甲も同じようにして、次に耳の下から首にかけて擦ると、ずっといい香りに包まれていられるとおっしゃった。そしてこれは、とても高価なものらしい。言われたとおりしてみると、甘いような不思議な独特の強い香りが漂うのだった。すると、子どもの頃のことがフッとよみがえってきた。家で大きな法要があったときの残り香や、数人のお坊さんとすれ違ったときにフワッと香った記憶などが頭を駆け抜けていった。香りの記憶というものは凄い。

いつの間にか10時になっていた。そろそろ本格的に始めないと・・・汗。手を合わせて拝んでから、静かに墨を磨り出した。懐かしい墨の香り。最初は、服に墨をこぼしたことなど、習字に関する事柄が思い出されたが、墨の香りが漂う中にいると、どんどん気持ちが落ち着いくるのがわかった。香の香りと墨の香り、そして丁子と伽羅。いろいろな香りに包まれて、一心に墨を磨った。試し書きをして、もう一度手を合わせ拝んだ。そして、緊張しながら写経を始めた。

20091102_tukue_2今日は何やら会議が多いとかで外が騒がしいかもしれないからと、戸を閉めてくださった。しばらくして、何人かが道場に入ってきたが、墨を磨る音やちょっとした動作音が聞こえるだけの静かな環境だった。香と墨の香りの中、いい緊張感を感じながら筆を進めた。あまりに静かなので、午前中に写経をするなら朝食はしっかり摂ってきたほうがいい。お腹がグルグル鳴っていては集中できない(笑)。

あとから来た人たちが、どんどん納経してゆく。私は半分も書けていない。最後に来た人も私より早く書き終わるのだった。ムムム・・・とは思ったが、自分のペースで書き上げた。正面の仏さまの前まで進み、座って拝んだ。香の上で写経した用紙を右に3回、左に3回、まわすようにくゆらせて清めてから箱に納めた。時計を見ると12時。私は写経に2時間もかかったのだった。

以前に比べると、少しは早く書けたけれど・・・(汗。輪袈裟を返すときに、お坊さんが「これは試験じゃないんだし、どれだけ時間がかかっても気にせんでええ(気にしなくていい)。」と声をかけてくださった。「あとから来て先に納経していった人たちは、おなじみさんだから同じようにはでけへん(できないよ)。ベテランさんたちは、自分の字で書いているし、お手本を見ないでも全部覚えてはるからね(覚えておられるからね)。さて、向こうにお茶を飲むところがあるから、ゆっくり休憩していったら? 庭には笛を吹いている観音さまがいるから見学しはったらええ(見学するといい)。ときどき、音楽関係の人がお参りに きはる(くるよ)。」下の写真が竜笛観音。

20091102_ryuutekilannonありがたいお言葉だった。しかし・・しかしだ。私はあることに気付いた。きっと、お坊さんもわかっていたんだと思う。私は、自分では書いているつもりだったが、よくよく考えると、ただなぞっているだけの写経をしていたんじゃないかな? 家でもそうだった。自分の字で書いたことがないんじゃないかな? そうか・・そういうことか。早いとか遅いとか、なぞるのがいいとか悪いとか、そういうことじゃなくて「自分の字」、自分の字で書くこと。今まで考えたこともなかった。でもそれは凄く意味のあることだと思った。

お寺で写経して良かった、ずっと家で書いていたら自分では気付かなかったかもしれない。今度からは自分の字で書いてみよう。気付けたことが嬉しかったし、薬師寺で写経をして良かった・・。

年末年始は、書き納め、書き初めをする人が多いので、もの凄く混雑するらしい。「こんなふうに丁寧に案内してあげられるかどうか・・・、それに人の出入りが激しいからゆっくり落ち着いて書きにくいしね。今日はゆっくり写経できて良かったね。またいらっしゃい。」最後に、そんなふうな言葉をいただいた。・・嬉しかった。ありがとうございました。

◆その後
薬師寺からハガキが届いた。その丁寧な姿勢に驚いた。薬師寺の参拝券もついている。お坊さんの顔が浮かんできた。やさしいかただったなぁ。何回か通ったら顔も覚えてくださるんだろうか・・。下の写真は届いたハガキ。

20091102_hagakiatena_2

というか、年末年始の写経は混雑するとか、写経でお坊さんと顔なじみになるとか・・・ただただ、驚くばかりだった。皆さん、なんて熱心なんだろう。こういう世界があったなんて、全く知らなかった。今でこそお寺に顔を出すようになったが、半年前までは全く縁がなかった世界なのだ。

20091102_hagakikuu

◆◆ここからは今回調べたこと◆◆
20091103_chouji ◆丁子(ちょうじ)(左の写真)
日本では丁子、丁香(ちょうこう)、クローブとも呼ばれる。インドネシア(モルッカ群島)が原産。フトモモ科の植物。開花前の花蕾を乾燥させた香辛料。 肉料理によく使われるが、他の香辛料とブレンドして使用することが多い。

クローブの花蕾は釘に似た形をしているため、中国では「釘」と同義の「丁」の字を使って「丁香」「丁子」の名があてられ、フランス語では釘を意味する Clou と呼ばれ、英語の Clove もこれを語源とする。非常に強い香気を持っているので、百里香という別名もある。

インドや中国では紀元前から殺菌・消毒剤に使われていた。古代中国では臣下が皇帝の前に出るときにはクローブを口に含んだという記録がある。ヨーロッパには中国商人が絹などと共にセイロン経由でもたらし、6~7世紀頃には貴族の間で珍重されるようになる。大航海時代になるとコショウ、ナツメグとともにスパイス貿易の中心的な商品となり一般にも出回るようになった。日本にもかなり古く、5~6世紀には紹介されていた。 正倉院の宝物のなかにも当時輸入された丁子がある。

特徴的な香気成分はオイゲノール (Eugenol)。 ゴキブリがこの香りを嫌うのでゴキブリ除けとしても使用されることがある。またクローブの精油(丁子油)は日本刀のさび止めにも用いられた。

生薬としての花蕾を丁子(ちょうじ)または丁香(ちょうこう)ということもあり、芳香健胃剤である(日本薬局方にも収録されている)。漢方では女神散(にょしんさん)、柿蒂湯(していとう)などに使われる。 インドネシアやインドでは丁子油で香りを付けたガラムというタバコもある。

20091102_noukyou◆伽羅(きゃら)
沈香(ぢんこう、正しくは沈水香木(ぢんすいこうぼく))の中で特に質の良いものを「伽羅」と呼ぶ。年代を経たものに高級品が多く、非常に貴重なものである。伽羅の語源は梵語で黒を意味する「カーラアグル」と言われ、伽南香、奇南香の別名でも呼ばれる。

沈香とは、代表的な香木で東南アジアに生息するジンチョウゲ科ジンコウ属の植物である沈香木などが、風雨や病気・害虫などによって自分の木部を侵されたとき、その防御策としてダメージ部の内部に樹脂を分泌、蓄積したものを乾燥させ、木部を削り取ったものである。樹脂が沈着することで比重が増し、水に沈むようになる。これが「沈水」の由来となっている。強壮、鎮静などの効果のある生薬でもあり、奇応丸などに配合されている。

このことを知り、伽羅って「香りの真珠」または「香木の真珠」だなと思った。

幹、花、葉ともに無香であるが、熱することで独特の芳香を放ち、同じ木から採取したものであっても微妙に香りが違うために、わずかな違いを聞き分ける香道(こうどう:下に説明あり)において、組香(くみこう:下に説明あり)での利用に適している。

◆香道(こうどう)
香道とは、香りを楽しみ、日常を離れた集中と静寂の世界に遊ぶことを目的とした芸道。一定の作法のもとに香木を炷(た)き、立ち上る香りを鑑賞するもの。

◆組香(くみこう)
組香とは、ある一定のルールに即した香りの楽しみ方のひとつ。文学的要素から一般的教養等、多種多様の分野に取材してルールが決められていて、そのルールにのっとって香りの異同を当てるもの。非常にゲーム性に富むが、その本質は香りを聞き、日ごろの雑踏の外に身を置いて、静寂の中でその趣向を味わうことにあり、答えの成否、優劣を競うものではない。

なんて高尚なゲーム。これをゲームというのかしらん。薬師寺では、「聞香(もんこう)教室」という香りを愉しむ会の募集をしていた。御家流や志野流の教室が薬師寺、名古屋、東京別院で開かれている。半年間5回のコースで、講習料は25000円。10人程度で行うようだ。なんとも奥が深い趣味。。いつかはこういうのもいいかもしれない。。

◆ぱぴりおブログリンク◆
はじめての般若心経 写経練習帖
四天王寺 (1)お寺で写経 「十七條憲法」

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